2025年10月16日に改正された在留資格「経営・管理」の新基準で、既存の外国人経営者にとって最も大きなハードルになりやすいのが資本金3,000万円です。

これまで資本金500万円の会社で「経営・管理」ビザの許可を得ていた経営者であれば、単純計算であと2,500万円の増資が必要になります。

ただし、

申請人本人が、自分の預金から2,500万円を現金で用意しなければならない

という意味ではありません。

自己資金だけでなく、借入金を原資とする出資、第三者からの出資、会社に蓄積された利益剰余金の資本金への組入れ、役員借入金を利用したDESなど、会社の状況によっていくつかの方法を検討できます。

この記事では、すでに「経営・管理」で会社を経営している方が、資本金3,000万円の新基準に対応する具体的な方法や注意点、3,000万円に届かない場合にどう考えるかを整理します。

まず確認|法人は3,000万円を登記上確認できる状態にするのが原則

法人の場合、新基準の3,000万円は、

で判断されます。

出入国在留管理庁は、登記事項証明書等によって3,000万円以上の事業規模であることを確認するとしています。

したがって、更新対策としては、法人であれば原則として資本金等3,000万円以上を登記上確認できる状態にすることが最も重要です。

たとえば、

会社の銀行口座に3,000万円ある

あるいは、

資本金500万円+利益剰余金2,500万円=3,000万円

といったケースも、登記上資本金が3,000万円あるとはいえません。

資本準備金、資本剰余金、利益剰余金は、そのままでは新基準の3,000万円には含まれません。

会社に十分な資産があることと、登記上の資本金等が3,000万円あることは必ずしもイコールではないのです。

ここからは具体的な増資方法について見ていきます。

方法① 申請人本人が自己資金を追加出資する

最も分かりやすいのは、申請人本人が追加で出資する方法です。

たとえば、

現在の資本金500万円
+本人からの追加出資2,500万円
=資本金3,000万円

とします。

自己資金で対応できるのであればシンプルです。

ただし、2,500万円という金額になると、

そのお金をどのように形成したのか

を追加で説明するよう求められる可能性があります。

長年の預金であれば預金履歴、給与や事業収入から形成したのであれば収入関係資料、不動産等を売却したのであれば売買関係資料など、資金形成の経緯を説明できる状態にしておくとよいでしょう。

また、海外から日本へ送金する場合には、送金記録を残しておくことが重要です。

方法② 借りたお金を出資に使う

3,000万円の原資は、必ずしも自己資金だけである必要はありません。

申請人本人が資金を借り、そのお金を会社へ出資する方法も考えられます。

たとえば、

親族から1,000万円を借りる
+自己資金1,500万円
→合計2,500万円を追加出資する

という形です。

この場合に重要なのは、借入の実態と資金の流れを説明できることです。

少なくとも、

は整理しておいて、説明できるようにしておく必要があります。

会社が借りただけでは資本金は増えない

ここは区別が必要です。

会社が銀行から2,500万円を借りた

だけでは、その2,500万円は会社の借入金であり、資本金ではありません。

会社の預金残高は増えますが、資本金3,000万円の基準を満たしたことにはなりません。

申請人等が調達した資金を会社へ出資することと、会社自身が借入をすることは別です。

資金の出どころは、どこまで説明する必要がある?

これは資金の出どころによって変わります。

一律に、

○年前まで通帳を出せばよい
借入先について○段階まで説明すればよい

という基準があるわけではありません。

実務上は、その資金がどこから来たのかについて、合理的な疑問が残らないところまで説明できるようにすると考えるのがよいでしょう。

たとえば金融機関から借りた場合であれば、融資契約と入出金記録によって比較的説明しやすいでしょう。

一方、

友人から1,000万円借りた
親族数人から合計2,000万円を借りた

という場合には、

その友人や親族は、本当にそれだけの金額を貸せる資力があるのか

という点まで確認される可能性もあります。

場合によっては、貸主の預金残高、収入、資産形成の経緯など、資金提供者側の資力を証明する資料まで求められることも想定しておくべきです。

特に、複数の親族や友人から短期間に資金を集めるような場合は、単に本人の口座へ入金された事実だけでなく、それぞれの資金の出どころまで説明できるようにしておいた方が安全です。

方法③ 第三者から直接出資してもらう

借入以外にも、家族、友人、事業パートナー、投資家などから会社へ直接出資してもらう方法があります。

たとえば、

現在の資本金500万円
申請人が1,000万円追加出資
事業パートナーが1,500万円出資

として、資本金3,000万円にすることも考えられます。

この場合も、出資者について、

などを整理しておく必要があります。

また、第三者の持分が大きくなる場合には、申請人本人が引き続き会社の経営を行う立場にあるかも重要です。

方法④ 役員借入金があるならDESを検討する

既存会社では、代表者が自己資金を運転資金などのために会社へ貸し付けていることがあります。

決算書に、

役員借入金 2,500万円

などと計上されているケースです。

この場合には、DES(デット・エクイティ・スワップ)によって、会社に対する貸付債権を出資に切り替える方法を検討する価値があります。

簡単にいえば、

会社から返してもらう予定だった貸付金を資本金へ変える

方法です。

すでに多額の自己資金を運転資金等として会社へ入れている経営者にとっては、有力な選択肢になり得ます。

特に大きなメリットは、新たに現金を会社へ入れず、会社の現預金を減らすことなく増資できる可能性があることです。

たとえば、代表者が過去に2,500万円を会社へ貸し付け、その資金がすでに会社の事業に使われている場合でも、貸付債権が現在も存在していればDESを検討できます。

もちろん、

は確認が必要です。

ただ、決算書に大きな役員借入金がある会社では、検討する価値のある方法です。

方法⑤ 利益剰余金を資本金へ組み入れる

長く黒字経営を続けてきた会社では、利益剰余金が積み上がっている場合があります。

利益剰余金は、そのままでは入管の3,000万円基準には含まれません。

株式会社なら資本金への組入れを検討できる

株式会社では、会社法上の手続によって剰余金を減少させ、その分を資本金へ組み入れることができます。

たとえば、

資本金500万円
利益剰余金3,000万円

という株式会社であれば、利益剰余金の一部を資本金へ組み入れ、資本金3,000万円とすることを検討できます。

会社内部に蓄積されている利益の一部を「資本金」という勘定へ振り替え、必要な登記を行う方法です。

そのため、十分な利益を積み上げてきた株式会社では非常に検討価値の高い方法です。

実際にどの程度まで資本金へ組み入れられるかは、直近の決算内容を確認して判断します。

合同会社は利益剰余金をそのまま資本金へ組み入れられない

注意したいのが合同会社です。

合同会社にも利益剰余金はありますが、株式会社と同じように、

利益剰余金2,500万円を減らして、そのまま資本金を2,500万円増やす

という処理はできません。

そのため、資本金500万円の合同会社に十分な利益剰余金があったとしても、利益剰余金を直接資本金へ振り替えて3,000万円にすることはできません。

もちろん、合同会社でも社員が新たに出資すれば資本金を増やすことはできます。

一方、

すでに会社に蓄積されている利益剰余金を使って3,000万円にしたい

のであれば、合同会社から株式会社へ組織変更したうえで、株式会社として利益剰余金を資本金へ組み入れる方法を検討することになります。

なお、株式会社へ組織変更しただけで資本金が増えるわけではありません。

まず合同会社を株式会社へ組織変更し、その後、株式会社で利益剰余金の資本金への組入れを行うという流れです。

組織変更には時間と費用がかかる

合同会社から株式会社への組織変更は、単なる名称変更ではありません。

組織変更計画の作成、定款や役員構成の決定、官報公告等による債権者保護手続、組織変更登記などが必要です。

特に債権者が異議を述べることができる期間は1か月以上確保する必要があるため、すぐに手続を完了できるものではありません。

また、

なども発生します。

そのため、合同会社で利益剰余金を利用したい場合には、

株式会社へ組織変更して利益剰余金を使う方がよいのか
それとも現金出資やDESなど、別の方法で増資する方がよいのか

を比較して判断する必要があります。

利益剰余金が十分あるから、簡単に3,000万円へ増資できるとは限らない。

これは合同会社の場合に特に注意したい点です。

会社が持っている不動産や設備は、そのまま資本金にはならない

会社が不動産や高額な設備を持っている場合、

この資産の価値を資本金にできないか

と考える方もいるかもしれません。

しかし、会社がすでに所有している不動産、車両、機械設備などの価値が、そのまま資本金へ追加されるわけではありません。

その財産はすでに会社の資産だからです。

一方、申請人本人などが個人的に所有している不動産等を会社へ出資する「現物出資」を検討できる場合はあります。

ただし、現物出資では財産評価、会社法上の手続、不動産であれば所有権移転や税務なども関係するため、現金出資より複雑になります。

会社がすでに高額な不動産等を所有している場合には、その資産そのものより、利益剰余金や役員借入金など、資本金へ振り替えられる可能性のある項目が決算書にないかを確認する方が実務上は重要です。

3,000万円に届かない場合はどうする?

3,000万円まで増資できるのであれば、早めに対応しておくのが最も分かりやすいでしょう。

一方で、

500万円から3,000万円への増資はすぐには難しい

という会社も少なくありません。

その場合でも、更新を最初からあきらめる必要はありません。

出入国在留管理庁は、2028年10月16日以降の更新申請についても、新基準に適合していない場合であっても、経営状況が良好で、納税義務を適切に履行し、次回更新までに新基準を満たす見込みがある場合には、その他の在留状況を含めて総合的に判断するとしています。

つまり、資本金が3,000万円未満であることだけを理由として、一律に不許可になるわけではありません。

ただし、

1,000万円なら大丈夫なのか
2,000万円なら許可されるのか

という具体的な線引きは公表されていません。

ここは今後の審査運用を見ていく必要があります。

3,000万円が無理でも、できる範囲で進める

たとえば現在500万円で、

今すぐ3,000万円は無理だが、1,500万円までなら増資できる

のであれば、それも検討する価値があります。

もちろん、1,500万円では新基準そのものを満たしません。

しかし、

のであれば、更新申請で説明できる事情は増えます。

部分的な増資をどの程度評価するかは入管の個別判断ですが、3,000万円がすぐに難しい場合には、「今いくらまでなら現実的に増資できるのか」を考え、その先の道筋を作っておくことが重要です。

増資を考えるなら、まず会社の決算書を確認する

既存会社の場合、必要な2,500万円をすべて新しく現金で用意する必要があるとは限りません。

そのため、増資方法を考えるときは、まず直近の決算書を確認します。

特に見るのは、

です。

たとえば、

というように、会社の状態によって現実的な方法は変わります。

「あと2,500万円をどう集めるか」と考える前に、すでに会社の中に使える選択肢がないかを決算書で確認する。

既存会社の3,000万円対応では、ここが最初の確認ポイントになります。

まとめ|自社に合った方法で3,000万円への対応を進めよう

経営管理ビザの新基準では、法人について資本金等3,000万円以上を登記上確認できる状態にすることが原則です。

そのため、3,000万円への増資が可能なのであれば、まずはその方法を具体的に検討することになります。

方法は一つではありません。

など、現在の会社の財務状況や会社形態によって選択肢があります。

また、現金出資や第三者出資を行う場合には、資金の出どころを説明できるようにしておくことも重要です。

特に親族や友人などから資金を調達する場合には、その人自身の資力まで確認される可能性があります。

一方、現時点で3,000万円への増資が難しい場合でも、そこで更新をあきらめる必要はありません。

現在どこまで対応できるのかを検討し、事業実態や法令遵守を整えながら、3,000万円までの現実的な道筋を示していくことになります。

行政書士とおやま事務所では、「経営・管理」の更新を見据えた資本金3,000万円への対応について、直近の決算書や現在の資金状況、会社形態を確認したうえで、利用できる増資方法を整理しています。

必要に応じて、登記・税務を担当する専門家とも連携しながら進めます。

東京都豊島区を拠点に、原則Zoomで全国からご相談いただけます。