2025年10月16日に改正された在留資格「経営・管理」の新基準では、日本人、永住者など一定の「日本人等」に該当する常勤職員を1人以上雇用することが必要になりました。

一見すると「従業員を1人雇えばよい」というシンプルな基準に見えますが、実際にはそうではありません。

たとえば、

技人国等の外国人をフルタイムの正社員で雇っている
日本人を週2~3日のアルバイトで雇っている
永住者を短時間勤務で雇っている

といったケースでは、いずれもそのまま「要件を満たしている」と判断することはできません。

常勤職員の新基準を理解するには、

①「日本人等」に該当する人か
②「常勤」といえる働き方か

の2つに分けて考えることが重要です。

この記事では、すでに「経営・管理」で在留している経営者を中心に、この2つのポイントと、実際に雇用する際に注意したい点を整理します。

常勤職員要件は「日本人等」と「常勤」に分けて考える

新基準では、

対象となる人を、常勤で1人以上雇用する

必要があります。

つまり、

というように、どちらか一方だけを満たしていても足りません。

まず「誰が対象なのか」を確認し、その次に「どの程度働けば常勤なのか」を確認すると分かりやすくなります。

「日本人等」とは?常勤職員として数えられる人

常勤職員要件の対象になるのは、次の人です。

出入国在留管理庁では、これらに該当する人を「日本人等」として常勤職員要件の対象としています。この記事でも以下では「日本人等」と表記します。

技人国等の外国人は対象にならない

特に注意したいのが、すでに外国人社員を雇っている会社です。

たとえば、

「技術・人文知識・国際業務」の外国人社員を1人雇用
週5日のフルタイム勤務
正社員
社会保険・雇用保険にも加入

という場合でも、その社員だけでは常勤職員1人の要件を満たしません。

「技術・人文知識・国際業務」のほか、「技能」「企業内転勤」などの就労系在留資格も同様です。

つまり、外国人社員がいる場合には、正社員かどうかを見る前に、その人の在留資格を確認する必要があります。

一方、外国人であっても「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」など、上記の「日本人等」に該当する在留資格であれば対象になります。

「常勤」とは?正社員でなければダメなのか

次に確認するのが「常勤」です。

「日本人等」に該当する人であっても、短時間のアルバイトとして雇っているだけでは要件を満たしません。

出入国在留管理庁は、常勤かどうかについて、

などを判断材料として示しています。

実務上、最も分かりやすいのは、「日本人等」をフルタイムの正社員として直接雇用するケースです。

ただし、「正社員」という名称そのものが絶対条件ではありません。

たとえば、雇用形態が契約社員であっても、

週5日勤務
週30時間以上
継続してフルタイムに近い形で勤務
雇用保険にも加入

というように、実際の働き方が常勤職員と同様であれば、常勤として扱われることがあります。

反対に、「正社員」と呼んでいても勤務時間が非常に短い場合などは、実態を確認する必要があります。

そのため、

正社員か、アルバイトか

という名称だけではなく、実際の勤務日数・勤務時間・雇用関係を見ることが重要です。

更新申請では常勤職員をどのような資料で証明する?

常勤職員を雇用した場合、更新申請ではその事実を資料でも示します。

出入国在留管理庁の提出書類案内では、常勤職員が1人以上いることを明らかにする資料として、

が挙げられています。

つまり、

この人を雇う予定です

ではなく、実際に雇用し、給与を支払っていることが確認できる状態にしておく必要があります。

勤務実態について追加の確認が必要になれば、雇用条件や実際の勤務状況について説明を求められる可能性もあります。

新基準への対応として採用するのであれば、雇用契約だけ先に作るのではなく、実際の勤務開始まで含めて準備すると考えておく方がよいでしょう。

名義だけの雇用は大きなリスクになる

常勤職員要件を満たすために避けるべきなのが、実態のない雇用です。

たとえば、

日本人の知人に名前だけ貸してもらう
親族を社員として登録するが、実際には勤務していない
給与を支払っているように見せる

といった対応です。

問題は、単に「常勤職員として認められない可能性がある」というだけではありません。

常勤職員は新基準を満たすための重要な審査項目です。

そこで提出した雇用関係の資料と実際の勤務状況が一致しなければ、常勤職員要件だけでなく、申請内容そのものの信用性を疑われる原因になり得ます。

一度、

この会社が提出する資料は実態と合っているのか

という疑問を持たれれば、他の事業実態や申請内容についても追加の説明を求められる可能性があります。

特に、新基準への対応として更新直前に採用した場合には、

その人は実際に何の仕事をしているのか
本当に継続して働いているのか

を説明できる状態にしておくことが重要です。

常勤職員の要件を満たすためだけの名義貸しは、更新対策どころか、かえって審査上のリスクを増やすことになりかねません。

家族を雇うことはできる?

家族だから常勤職員になれない、というわけではありません。

たとえば、日本人の配偶者や、永住者・定住者などの家族が「日本人等」に該当し、実際に常勤で勤務するのであれば、要件を満たすことは考えられます。

ただし、

配偶者だから、とりあえず従業員にする

というだけでは不十分です。

家族を雇用する場合でも、

といった雇用実態が必要です。

特に、これまで一人で経営していた会社が新たに配偶者や親族を雇う場合には、その人が会社で具体的に何を担当するのかを説明できるようにしておいた方がよいでしょう。

日本語能力要件とは別に考える

常勤職員1人の雇用とは別に、新基準では、申請人または常勤職員のいずれかに一定以上の日本語能力も求められています。

この2つは別の要件です。

ただし、同じ人によって両方を満たせる場合も多くあります。

たとえば、日本人を常勤で雇用すれば、

の両方を満たします。

一方、永住者や日本人の配偶者等の外国人を雇用した場合には、「日本人等」の雇用要件は満たしても、その人が自動的に日本語能力要件まで満たすわけではありません。

その人自身がJLPT N2以上、BJT400点以上、日本の一定の教育機関を卒業しているなど、日本語能力の基準を満たしているかを別途確認します。

反対に、

N2を持つ技人国の外国人社員が何人もいる

場合、日本語能力要件を満たすことはできますが、「日本人等」の常勤職員1人の要件は満たしません。

つまり、

雇用要件では「日本人等」かどうかを見る。
日本語能力要件では、その人が日本語能力の基準を満たしているかを見る。

この2つを混同しないことが重要です。

今すぐ常勤職員を雇えなくても、更新をあきらめる必要はない

すでに「経営・管理」で在留している方の中には、

現在の会社の規模では、今すぐ常勤職員を1人採用するのは難しい

というケースもあると思います。

少なくとも経過措置期間中は、常勤職員要件を満たしていないことだけを理由として更新が不許可になるわけではありません。

したがって、

常勤職員を雇えない
=更新できない

と考えて、最初からあきらめる必要はありません。

一方で、

将来、日本人を雇います。

とだけ説明しても、具体的な見通しがあるとは言いにくいでしょう。

現時点で雇用できない場合には、少なくとも、

採用する予定なのかを整理しておく方がよいでしょう。

たとえば、

今期は一人で事業を継続するが、売上の増加を見込んで来年度中に営業担当として日本人または永住者等の常勤職員1名を採用する予定

というように、現在の会社の状況とつながった計画であれば説明もしやすくなります。

もちろん、実現できそうにない採用予定を無理に作る必要はありません。

現在の事業状況に合った採用計画を立て、新基準への適合に向けて実際に準備を進めることが重要です。

まとめ|「日本人等」と「常勤」を正しく理解して雇用を進めよう

経営管理ビザの常勤職員要件を考えるうえで、中心になるのは、

「日本人等」に該当するか
「常勤」といえる働き方か

の2点です。

すでに社員がいるからといって、必ずしも要件を満たしているとは限りません。

技人国等の外国人であれば雇用要件の対象外ですし、「日本人等」であっても勤務時間が短ければ常勤に該当しない可能性があります。

反対に、「正社員」という名称ではなくても、勤務実態によって常勤と認められる場合があります。

これから新基準への対応として採用するのであれば、採用前にその人が「日本人等」に該当するか、予定している勤務条件で「常勤」といえるかを確認してから進めることが大切です。

行政書士とおやま事務所では、「経営・管理」の更新を見据えた常勤職員要件について、現在雇用している従業員の在留資格・勤務条件や、今後の採用予定を確認しながら、新基準への対応を整理しています。

「今いる社員で要件を満たすのか」「アルバイトや時短社員でも常勤になるのか」「これからどのような人を採用すればよいのか」など、判断が難しい場合はご相談ください。

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